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イタリア町めぐり

アプリカーレの全景 2009年9月 地図


 リグーリア(リグリア)州というと、チンクエテッレやリヴィエラ海岸のように、海辺の町という印象が強いかもしれない。そんな町もいいのだが、海岸から一歩内陸に入ると、また個性的な町が点在しているのだ。
 とくに魅力的なのが、「鷲の巣村」と呼ばれる山岳都市の数々。なかでも、このアプリカーレは、山岳都市の理想形といってよいほど美しい町である。

 フランス国境の町、観光客で賑わうヴェンティミリア(Ventimiglia)からバスでふもとのイーゾラボーナ(Isolabona)まで約30分。ここから脇道に入ると、まもなく上の写真のような威容が目に飛び込んでくる。こんな美しい町だから、イタリア人だけでなく、フランス人もまた国境を越えてやってくる。


町の外周を走る車道。ここには観光客の車も通るが、町なかのほとんどには車が入れない。入れたとしても、ここの住民が所有する車だけである。

2009.6

アプリカーレ外周の道


 じつは、このとき、アプリカーレに直通するバスに乗り遅れてしまい、一時は訪問を断念しかかった。だが、よく時刻表を見ると、イーゾラボーナを通って別の町に向かうバスがあることを発見。しかも、イーゾラボーナからアプリカーレまでの距離は、地図を見ると約3km。これなら十分歩けると判断し、あとは急坂じゃないことを祈って、イーゾラボーナでバスを下車したのであった。

 結果的に、これが正解であった。坂はゆるやかで、もちろん道は舗装されていた。空はまずまず晴れ、さわやかな風が肌に涼やか。そして何よりも、15分ほど歩いたところで、アプリカーレの全貌が正面に見えてきたのだった。思う存分、町を拝んで写真を撮ったのである。
 バスに乗っていたらこうはいかなかっただろう。町中からわざわざここまで戻って写真を撮ったに違いない。


アプリカーレの細道
▲町の下のほうは、薄暗い道が続いていた。
2009.6
▼建物の下はトンネルで通過。階段道路もあちこちにあった。
2009.6
アプリカーレの細道


 それにしても、なぜこんなところに町をつくったのか、本当に不思議である。それも1つや2つではない。この地域では、バスの車窓の右に左に、山岳都市の姿が見える。車が普及する前は、さぞかし行き来が大変だったことだろう。

 遠くから眺めてよし、という山岳都市だが、いざ中に入ってみると大変である。細い道が迷路のように続き、しかもあらゆる道が急坂なのだ。なかには、上右の写真のように、階段になっているところもある。
 そんな道を、カメラの入った重いショルダーバッグを持って歩くのだ。しかも、このときは夏。少し歩いただけで、心臓がバクバクいってきた。


町の中心にある広場。細い急な坂道を登ってくると、突然目の前が開けて、この広場にたどりついた。バールが2軒あったので、ここで昼食をとる。

2009.6

アプリカーレ中腹の広場


 でも、よく考えたら、家が建ち並んでいなければ、ここは立派な山である。山登りをしているのだと考えればしかたがない。せめてもの慰めは、道が狭くて両側に建物が迫っているために、直射日光が当たらなかったことかも。

 そうしてたどりついたのが、この写真の広場。町の中央--つまり、山の中腹にひらかれた広場だ。青いベンチがちらりと見えるのでわかるように、ここにはバールが2軒あった。町なかのレストランはまだ営業していなかったので、ここで昼めし代わりにパニーノを食べたのであった。

 まだまだ上には家が建っていたので、さらに登山を試みて、たどり着いたのが一番下の写真の地点である。山岳都市に行くたびに、こうして町の遠景を撮り、町の山頂まで登山しなければならない。いや、「ならない」ことはないのだが、やらないことには気が済まないのである。


アプリカーレの細道
▲暗い道ばかりではない。「陽のあたる坂道」って、どこかで聞いたタイトル。
2009.6
▼町の南側に通じる道。南側はやや平らな開けた場所になっていて、レストランや小さなホテルがあった。
2009.6
アプリカーレの細道


 昼休みの時間だったこともあってか、町なかの坂道では、ほとんど人とすれ違わなかった。広場にも観光客が数人ほどいただけなので、「ずいぶん活気のない町だな」と思っていたが、それは誤解だった。

 町の南側--つまりトップの写真の反対側にやってくると、そこには小さな駐車場があってホテルもあった。レストランも2、3軒並んでいて、フランス人やイタリア人が食事をしていた。でも、彼らは町中を散歩しないのだろうか。外観をざっと見て食べるだけで満足なのか。

 歩かないと満足できない私は、さらに南斜面を登ること十数分。ブヒヒヒンという馬のいななきに驚いた。近くの農地まで荷物を運ぶためなのか、農家の裏庭に馬がつながれていた。

 帰りのバスの乗客は、イーゾラボーナまで私一人。貸切り気分で、バスの高い窓から絶景を独占することができた。


●所在地
リグーリア州インペリア県
●公共交通での行き方
・ヴェンティミリア駅前からRiviera Trasporti社のアプリカーレ行きバスで35分。1日数往復。
・ヴェンティミリアへは、ジェノヴァからイタリア鉄道の特急で2時間強。ニース(フランス)からフランス国鉄で50分。一部の直通列車以外は、イタリア、フランス双方とも、ヴェンティミリアが終着駅。
●見どころ
「鷲の巣村」と呼ばれる、典型的な山岳都市の様子。
●老婆心ながら
本文にある通り、アプリカーレ行きのバスがなくても、カステル・ヴィットーリオ行きに乗って、イーゾラ・ボーナで下車するといい。そこからゆるい坂道(車道)を徒歩30分あまりでアプリカーレに着く。
アプリカーレの背後からの眺め さらに上を目指して坂道を登り、ようやく町全体を見渡せる場所にやってきた。トップの写真のちょうど反対側である。 2009.6
2011年6月作成

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