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イタリア町めぐり

ドロミティをバックにしたベッルーノの遠景(西側) 地図


 ベッルーノのキャッチフレーズは、「山の小さなヴェネツィア」(Piccola Venezia di montagna)である。イタリアのガイドブックにそう書いてあった。
  ここはヴェネツィアを州都とするヴェネト州の町であり、 ヴェネツィアの北70キロほどのところに位置している。

  それにしても、である。なぜ「山のヴェネツィア」なのか。日本人なら誰もが疑問に思うだろう。いや、アメリカ人だってフランス人だって中国人だって、もしかしたらイタリア人でさえそう思うかもしれない。
----海に面していて、水の都だからこそヴェネツィアじゃないの?
  そんな疑問を抱きつつ、ベッルーノ駅に降り立ったのは2008年6月下旬。イタリアのあちこちで史上最高気温を記録した猛暑のさなかであった。


丘の上に広がるベッルーノの町。右手に見える大きな建物と塔がドゥオーモ。

2008.6

ベッルーノ遠景(東側)


 ベッルーノの町は、ピアーヴェ川(Fiume Piave)にアルド川(Torrente Ardo)が合流する地点に、まるでテラスのように突き出した台地の上にある。この町の付近では木材が豊富にとれたそうで、著名な木の彫刻家であるアンドレーア・ブルストロン(Andrea Brustolon)も、この町の出身だそうだ。

「どこが山のヴェネツィアなんだろうか」と 、夕暮れの旧市街をふらふら歩いて行くうちち、ようやくわかった。それは海でも運河でもなくて、狭苦しい路地とポルティコ(アーケード)なのである。たしかに、うねうねと続く路地と、延々と続くアーチ状のポルティコは、ヴェネツィアの裏通りに似ていた。
  でも、ここには、ヴェネツィアのような観光客の姿はほとんどない。おまけに、夏時間で夜8時を過ぎてもあたりは明るいのに、店はもう閉店時間になっているものだから、地元の人の姿も少なく、なんだかわびしくなってきたのであった。


ドゥオーモ広場

夕暮れ(といっても夏時間で8時過ぎ)のドゥオーモ広場。2つの広場が連続し、その周囲に歴史的な建造物が建ち並ぶ壮麗な眺め。

2008.6


これが「山のヴェネツィア」たるゆえんのポルティコ。旧市街を貫いて延々と続いていく。

2008.6

旧市街のポルティコ


 地図で見るとよくわかるが、町の三方を囲む川からは急斜面となっており、そこを登りきると平らな台地になっている。かつては難攻不落の町だっただろうことが容易に想像できる。

  そんな 丘上都市とあれば、周囲からその偉容を写さねばならない。そう決心した私は、急な階段を下り、30度以上の暑さと強烈な日射しのなかを、撮影ポイントを探してさまよったのである。その結果が、トップの写真と、2枚目の写真である。なかなかいい感じ。

 そこで初めて気づいたのだが、川沿いには大規模な駐車場が設置されて、そこからエスカレーターで町まで昇るようになっていた。市街地への車両乗り入れが制限されているのかもしれない。
 それにしても、市街地を一歩出ると、そこには歩道がほとんどなく車の天国である。そんなところを、撮影ポイントを求めてトンネルをくぐったり、橋をわたったりするのはヒヤヒヤものだった。


夕暮れの旧市街

旧市街の北、この先が新市街へ通じる門になる。

2008.6


旧市街への入口の一つ、町の南端にあるルーゴ門(Porta Rugo)。

2008.6

ルーゴ門


 もう一つ印象に残ったのが、新市街のマッテオッティ通りにあるおしゃれなバール。新市街といっても、旧市街の門をくぐってすぐのところにある。
  その店で、 私は夕食前にマルティーニ・ロッソというベルモットを頼んだ。チンザノに似た薬草酒で、食事前に胃を動かすにはぴったりの飲み物である。

 すると、カウンターにいた20歳ほどの女の子がこう言ったのだ。
「ギアッツォ(Ghiazzo)は入れる?」
 一瞬なんのことかと戸惑ったが、その直後、四半世紀前のフィレンツェの語学学校で聞いた話がいきなり脳裏によみがえった。金髪で青い目をした若くてかわいい女の先生が、こんなことを言っていたっけ。
「北部では、『……ッチョ』が『……ッツォ』になるのよね」
 そう、ギアッツォとは氷を意味するギアッチョ(Ghiaccio)だったのだ。それにしても、肝心の文法や構文は忘れても、こんなことを覚えているなんて不思議なものである。
 そして、いまどきの若い女の子が、こんな伝統的な北部なまりをしゃべっていたのもおもしろかった。


●所在地
ヴェネト州ベッルーノ県(県都)
●公共交通での行き方
・パドヴァ駅からイタリア鉄道のカラルツォ方面行きローカル線で約2時間。ヴェネツィアからトレヴィーゾ経由の直通列車も1日に2往復ある(2008年現在)。
●見どころ
・「山のヴェネツィア」と呼ばれる旧市街。狭い道にポルティコ(アーケード)がうねうねと続いていく様子と、ドゥオーモ広場の広々とした空間。
・ピアーヴェ川の崖上にある丘上都市の様子。

●老婆心ながら
鉄道でヴェネツィアからカラルツォ行きに乗ると、ベッルーノは通らない。その場合、途中のポンテ・ネッレ・アルピ駅で、ベッルーノ方面行きの線に乗り換えればいい。乗り換えて1駅でベッルーノに着く。
新市街のマッテオッティ通り 新市街にあるマッテオッティ通り。しゃれたカフェやブティックが立ち並んでいる。直線に走る道に対して、家並みが微妙にカーブしているところがニクい。中央の高い建物が聖ロッコ教会。  2008.6
2008年11月作成

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