カステルメッツァーノ遠景2016/09 地図

バジリカータ州というと、世界遺産になったマテーラがあまりにも有名で、それ以外の町は日本ではあまり知られていない。そんななかで、イタリア人観光客に人気なのがここカステルメッツァーノ(カステルメッザーノ)である。
 まるで奇岩に抱かれたかように、家々が斜面にへばりついている様子は、写真で一度見たら忘れられない。私も20世紀のうちにイタリアの観光雑誌で目にして、ぜひ訪ねたいと思っていたのだが、それがやっと実現したのは2016年になってからのことである。


全景が見える広場にて 遠くの家にいる友だちと大声でやりとりしている子どもたち。どこの家なのか、私にはとうとうわからなかった。
2016/09


ポテンツァの宿に大きな荷物を置いてきたのは正解だった。一般車は村の入口の広場までしか入れず、村の最奥に位置する宿までは、アップダウンの激しい道や階段を歩くしかなかった。
 すでに観光地として有名になっていたので、俗っぽくなっていたら嫌だなと思っていたが、案に相違してすれ違う人びとの素朴で温和なまなざしが印象的だった。
 それにしても、この風景を実際に目で見ると、写真ではけっして味わえない迫力を感じることができる。しかも、狭い村ながら、目に入る風景は歩くとともに大きく変化していく。1泊しかしなかったものの、飽きることなく村を散歩していたら、町の親父たちや小学生と顔見知りになってしまった。



▼泊まったB&Bの近く。村のどんづまりにあって、家々がまるで岩山に呑み込まれているように見える。 2016/09 村のどんづまり

朝の旧市街 ▲朝の旧市街。上り下りのあるくねくね道を歩くのは、高齢者にはつらい。 2016/09


カステルメッツァーノを含む一帯は、ピッコレ・ドロミーティ・ルカーネ(Piccole Dolomiti Lucane)、つまり、「ルカーネ地方(バジリカータ州周辺の古名)の小さなドロミーティ」と呼ばれて、州立自然公園に指定されている。ドロミーティというのは、北イタリアにある奇岩の並ぶ観光地としても有名な山脈である。あそこまでスケールは大きくないが、似たような風景だということで、そう呼ばれているわけだ。
 以前、ターラントからポテンツァに向かう高速バスに乗っていたときのこと。居眠りから覚めて車窓に目をやると、夕日を背にしてバスに迫ってくるような奇岩が見えて驚いた覚えがある。もしかしたら夢だったかと思ったのだが、このあたりの風景だったのだ。



旧市街の親父軍団▲夕方の旧市街でたむろしている親父軍団。
2016/09


旧市街の細いくねくね道 地元の人の車は、旧市街に入ることができる。
2016/09


以前調べたときは、高速道路から離れると、すさまじいカーブが連続する山道を登っていく道しかなかったはずだった。ところが、2016年に訪問したときには、村の北側の山腹にポテンツァに抜ける真新しい近道のトンネルができていた。このおかげで、だいぶ所要時間は短縮されたのだろう。でも、古い道も通ってみたかったので、ちょっと残念でもある。



▼村のどこからでも岩山が見える。 2016/09朝の旧市街

猫の家族 ▲村の全貌が見わたせる道にいた猫の家族。 2016/09


カステルメッツァーノは、人口が1000人に満たない小さな村だが、素敵なレストランがある。「Al Becco della Civetta」(アル・ベッコ・デッラ・チヴェッタ)という店で、ミシュランガイドに載っているとも知らず入ってみると、サービスも料理も店からの眺めも満点であった。シーズンオフの平日だったからか、広い店内には私たちのほかにイタリア人グループの数人がいるだけ。この村に訪れる人も、多くは日帰りなのだろう。
 でも、この高原の村で静かな夜を過ごさず、村人の素顔が見えるすがすがしい朝を迎えないのはもったいないというしかない。



●所在地
バジリカータ州ポテンツァ県
●公共交通での行き方
・ボテンツァからSita社のバスで約50分。1日に3~4往復(途中乗り換えの便もあり)
●見どころ
・ごつごつした岩山に抱かれた家並み。
●老婆心ながら
谷を隔てた隣村のPietrapertosa(ピエトラぺルトーザ)との間にハイキングコースがある。片道2時間。

冬に備えて薪を村に運び込む2016/09

2019年11月公開


カステルメッツァーノ写真ギャラリー

カステルメッツァーノ旧市街 カステルメッツァーノ旧市街にある役場 カステルメッツァーノ旧市街にある役場
夕方も仲良し親父軍団 カステルメッツァーノ旧市街 カステルメッツァーノ旧市街
カステルメッツァーノ旧市街 B&Bのベランダ おじいさんとネコ

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