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イタリア町めぐり

夕日を浴びて輝くモディカ・アルタの町 地図


 さして期待もせずに訪れた町で、予想外の見事な光景を目にしたときほど、うれしいことはない。とくにほとんど情報がない町だと、その喜びもひとしおである。
  私にとってそんな町の一つが、シチリア南東部にあるモディカ(モーディカ)だ。観光客は、周辺のラグーザやノートといった町で宿泊はしても、ここモディカは素通りということが多いように思われる。

  確かに、著名な美術館や博物館があるわけでもなく、抜きんでて歴史的な建造物や名所があるというわけではない。バロック式の教会は見事だが、似たような教会は周辺の町にもある。
  だが、ここモディカは町全体が目を見張るようなつくりになっているのだ。町の低い部分に数百メートルのメインストリートが走り、そこを取り囲むように、両側の丘に文字通りびっしりと家が立て込んでいる。見晴らしのいい場所から町全体を見渡すと、まるでジオラマを見ているような錯覚に陥ってしまうのである。


モディカ・バッサ(下の町)からモディカ・アルタ(上の町)を見上げる。日曜日のメインストリートは、人で賑わっていた。

2007.11

モディカ・バッサの中心部


 モディカは、周辺のラグーザ、ノート、シクリ(シックリ)、コミゾ(コーミゾ)などとともに、ヴァル・ディ・ノート(Val di Noto)という地域にある町の一つだ。この一帯は1693年に起きた大地震によって、建物がほぼ全壊したという。
  復興に際しては、当時の最先端であった後期バロック様式を取り入れて、見事に町を再建。こうして、ヴァル・ディ・ノートの諸都市には、美しくもごてごてした装飾をほどこしたバロック様式の建物が多く見られるようになり、現在では世界遺産として登録されるほどになったわけである。


モディカ・アルタから見おろしたモディカ・バッサの町

モディカ・アルタの展望台、ベルヴェデーレ・ピッツォ(Belvedere pizzo)から眺めた町の様子。
ここまで歩いて登るのは、さすがに疲れた。

2007.11


モディカ・バッサの北のはずれ近く。この町のどこにいても、こうした見事な風景が目に入ってくるのだ。

2007.11

モディカ・バッサ


 モディカにはバスでやってくる人が大半だと思う。ラグーザやカターニャから来ると、モディカを見渡す北側の丘の上から、カーブを描きながら小さなバスターミナルに到着する。確かに、それもいい導入なのだが、私の場合、鉄道でやってきたことがモディカを印象づける大きな理由になったと思っている。
 町の谷底にある駅は小さくて、それ自体はなんのことはない。でも、出口を出てゆるやかな坂を登っていくにしたがって、左右の丘の上に家がびっしりと立て込んだ光景が、徐々に視界に入ってくるのだ。それは、久しぶりに旅先でわくわくするひとときであった。

 インフォメーションで紹介してもらった宿は、個人経営のこぢんまりとした清潔なプチホテル。主人の名は町の名前と同じモディカ氏といった。若いころは、アジア、アラブ、アフリカ、中南米を含めて世界を旅行したそうで、そのときの写真が所狭しと壁に飾ってある。なかでもスリランカには長く住んでいたそうで、アジアの社会事情にも詳しいインテリ男性だ。


坂道の向こうに見えるサンジョルジョ教会

モディカ・アルタの中腹を、階段で登っていく。目の前に見えるのは、この町でもっとも大きいサンジョルジョ教会。手前右には水場が見える。

2007.11



 朝はモディカ氏に鍵を預けて外出。夕方に帰ってくると、今度はアルバイトらしき若い男性がフロントで待っており、これまた見るからにインテリっぽい。私は歩き回って疲れているのだが、彼はとても話好きで、毎日この時間は、しばしイタリア語会話練習となった。
 シーズンオフで、ほかに泊まっている人が、ほとんどいなかったこともあるだろうが。
「この町はとっても居心地がいいね。大きすぎず、小さすぎず……」
「そうでしょう。食事もおいしいし、酒もうまいよ。気に入ってもらえてうれしい」

  まあ、そんなわけで、2泊だった予定が、3泊、そして4泊に延長。ここをベースキャンプにして、周辺の町もいろいろとめぐることができた。帰国が迫っていなければ、さらに2泊くらいしていただろう。


モディカ・バッサの中心部を行く「親父愚連隊」(?)

2007.11

モディカ・バッサの町


  そして最後の朝、モディカ氏は別れを惜しんでくれた。
「もう、明日は日本か。サケを飲んで、日本のヌードルを食べるのが楽しみだろう」
「うん。それから、中国起源で日本でアレンジしたヌードルも人気があってね」
「何? それは?」
  余計なことを言ってしまって、 バスの発車時刻が迫っているというのに、朝っぱらからラーメンの説明に苦労してしまった。

  急いでバスターミナルに駆けつけたが、幸いなことにバスはまだ到着前。結局、定刻より20分遅れてカターニャ行きがやってきたのであった。


●所在地
シチリア州ラグーザ県
●公共交通での行き方
・カターニャ(バスターミナル、空港)から高速バスで約2時間。
・シラクーザからバス、鉄道で1時間半。
・ラグーザからバス、鉄道で30分。

●見どころ
・谷をはさんで両側の丘にびっしりと家が建っている町の光景。
・バロック様式の教会や建築物。

●老婆心ながら
モディカのチョコレートは世界的に有名。食べると砂糖がざらざらと舌に感じるのが特徴。
モディカ・アルタから反対側の丘を眺めた モディカ・アルタの中腹から、反対側の中腹を見渡したところ。  2007.11
2009年2月作成

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