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イタリア町めぐり

町の遠景 地図


 イタリア全土には無数の山岳都市が点在しているが、そのなかでもサンドナート・ディ・ニネーア(San Donato di Ninea)ほど異形の町は少ないのではないか。
 その理由は、上の写真を見れば一目瞭然だろう。二段に分かれた不思議な構造。山の頂上から尾根に沿って立ち並ぶ「上の町」の様子--2004年にバスでこの付近を通りかかったときに、この町の外観に目が釘づけになってしまったのも理解してもらえるだろう。

  そして翌年、どうしてもこの町を訪ねてみたいと思い、カラブリア(カラーブリア)州北部観光のベースキャンプであるカストロヴィッラリ(Castrovillari)から、1日に2往復しかないカラブリア鉄道バスのディアマンテ(Diamante)駅行きに再び乗車したのである(現在、このバス路線は廃止)。


バス停から町までの道で、こんな人にもすれ違った。近くの農園から家まで、馬に荷物を運ばせている。
バックの山は、右がムーラ(Mula)、左がムレッタ(Muletta)。

2005.11

馬に荷物を積んで


 サンドナート・ディ・ニネーアは人口2000人弱の小さな町だが、ここには古い歴史が秘められている。
 現地のサイトによれば、紀元前5世紀のギリシャの歴史家・地理学者であるエカテーオ・ディ・ミレート(エカタイオス・ミレーシオス)の書物に記されたギリシャ植民市のニネーアという町が、このサン・ドナート・ディ・ニネーアである可能性が高いとのこと。その後、ノルマン人支配下の時代にサン・ドナートが加わって現在の名となったという。
 さらに時代が下ると、オスマン・トルコの支配を逃れたアルバニア人がこの付近に多く移り住んだが、この町にも現在アルバニア系住民が住んでおり、日常的にアルバニア語が話されているそうだ。実際に、町の中心にある小さな小さな広場では、それらしき耳慣れないことばが話されているのを聞いた。

頂上のアッスンタ教会 町の遠景
▲山の頂上にあるアッスンタ教会。ここからの眺めは抜群。そして、背後にも家々と山並みが続く。
→ふもとのバス停からは、ちょっとした登山である。山の頂上右にかすかに見えるのが、アッスンタ教会。
  2005.11

 カストロヴィッラリのバスターミナルを定刻より20分遅れて、早朝6時に発車したバスは、まだ暗いなかを、運転手1人、乗客2人、社員1人を乗せて、見晴らしのよいくねくねとした山道を走っていく。
「サンドナート・ディ・ニネーアに行くのか? あそこは、美人が多いんだぞ」 という同乗の社員のアドバイス(?)に、眠さもやや吹き飛んだ私であった。

 途中、フィルモ、ルングロ、アックァフォルモーザといったアルバニア系住民が住む山岳都市を通過して、ビーヴィオ・サンドナート・ディ・ニネーアに到着したのは、すっかり明るくなった7時すぎ。ちなみに、ビービオ(Bivio)とは「~下」という意味で、要するに「ふもと」である。ここから町までは、片側1車道の舗装道ではあるが距離にして3.5キロ、標高差300メートル以上の山道を登らねばならなかった。

頂上近くのアッスンタ広場
▲頂上のアッスンタ教会そばにあるアッスンタ広場。坂道だらけで、どこを指して広場といっているのだろうか……。
  2005.11
▼急斜面に町ができているので、町中が見事に坂道と階段だらけ。
  2005.11
階段が連続する路地

 こんな田舎道なら、たいして車ともすれ違わないと思っていたら、完全に予想がはずれた。ちょうど朝の通勤や野良仕事に向かうらしき車、逆に町に食料や牛乳を運搬する車などがひんぱんに通るではないか。
 ただでさえ、徒歩で登るようなヒマ人などいそうもない道に、朝っぱらから変な東洋人が歩いているものだから、目立つことこのうえない。運転しながら手を振る人、不思議そうな顔をして見つめる人、クラクションを鳴らす人など、やっぱり田舎の人は放っておいてくれないのである。

 こうして晩秋の朝だというのに汗だくになって坂道を登ること数十分、やっとのことで町の入口にたどりついた。しかし、これまで見てきたどの山岳都市にも負けず、町なかの細い道は急坂と階段ばかり。平衡感覚が狂いそうになりながら、まずは頂上のアッスンタ教会に向かうことにしたのである。

屋根と煙突 下の町
* ポインタを合わせると時計塔を拡大します。
▲下の町で見た不思議な煙突。
→下の町の様子。右下の時計塔は、サンティッシマ・トリニタ教会。
  2005.11


 トップの写真でわかるように、この町は上下2段に分かれているが、上の町が旧市街で下の町が新市街らしいことがわかった。そして、下の町の入口から見ると、アッスンタ教会はまさに頭の上にあり、町なかにそそりたつあぶなっかしい崖の上に建っている。見ているだけで首が痛くなり、めまいがするほどだ。
  そこまで、さらに20分ほどの急坂をひいこら登って、ようやく頂上までたどりついた。ちょっとした登山をしただけあって、カラブリア北部の丘陵の眺めは抜群。そして、後ろを振り向くと、雪をかぶった山々。そこには、野生動物が住み、鉱物資源が眠る国立公園への細い道が続いている。シーズンならば、トレッキングの人もいるらしい。

 さて、この町に美人が多いという未確認情報であるが、訪れたのが朝早かったこともあり、あまり多くの人間を見ていない。しかも、見かけたのは男女とも年寄りが多かったので、確認できなかったのが残念である。
  下の町でようやく見つけた小さな広場でベンチに腰掛け、その片隅にあった小さなバールで買い込んだパンをほおばりながら、5時間後にやってくる帰りのバスの時刻まで何をしようか、ひとしきり考え込んだ私である。
結局、2つ隣の町まで、15キロの道を歩くことにした。


●所在地
カラブリア州コゼンツァ県
●公共交通での行き方
・本文中にあるカストロヴィッラリからベルベデーレ(ディアマンテ)駅行きのバスは廃止。
・カラブリア鉄道バス、Perrone社のバスを乗り継げば、カストロヴィッラリ、ディアマンテから行けるようだが詳細不明。
・近くの町とを結ぶ近距離バスは中心部まで行くが、朝夕のみ(朝出発・夕帰宅)の運転なので利用は難しい。
・コゼンツァとモーデナを結ぶLa Valle社の長距離夜行バス便がある(バス停はふもと)

●見どころ
・急斜面に開かれた上下2段の山岳都市。
・ボッリーノ国立公園の山並みと自然。

●老婆心ながら
町のなかにレストランはなさそう。小さな広場に小さなバールがあるだけだった。
遠景
サンドナート・ディ・ニネーアの遠景。上の町と下の町がよくわかる。かなり離れた場所からでないと、この町の全景は見えない。
  2005.11
2008年6月作成

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