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| 1981年、大晦日のシチリア。私は、カターニャから南に向かう列車に乗り、車窓から見えるエトナ山の姿に見とれていた。 6人がけのコンパートメントには、私のほかには70過ぎと思われるおばあさんが一人。私がイタリア語を話せるかどうかを確かめることもなく話しかけてきた。 「どこまで行くんだい?」 「シラクサまで」 そう私が答えると、やや間があって彼女は納得したように言った。 「ああ、シラグーザか」 イタリア語の初心者だった私は、語尾から2つ目の音節にアクセントをつけるという基本的な法則を忘れていた。しかも、母音にはさまれた「s」は濁るという原則も忘れていた。 だから、Siracusaはシラクーザと発音しなくてはいけなかったのだ。 しかしである。「cu」はどう考えても「ク」であって、「グ」にはならない……標準語では。 でも、思った。 --シラグーザか、田舎っぽくていい響き! まだ20代なかばだった私は、老婆の一言を聞いて、はるばるシチリアまでやってきたという感慨にふけったのであった。 |
| 駅のあるシチリア本島側からオルティージャ島を望む。
2007.11 |
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| そのときのシラクーザの町の様子を撮ったのが、下の4枚の写真である。 当時、シラクーザ観光といえば考古学地区(町の北西)にあるギリシャ時代の巨大な劇場跡やデュオニソスの耳と呼ばれる洞窟がもっぱらが有名であり(いまでも有名だが)、私も駅に荷物を預けてはるばる歩いて訪ねたのであった(2007年現在は、荷物預かり所はない)。 確かに遺跡も素晴らしかったのだが、何にも増して強く印象に残ったのは、駅の南東方向にあるオルティージャ(Ortigia)島である。 12月とは思えない日射しの中を、駅から歩くこと20分。30mほどの狭い水路を渡ると、そこには別の世界が広がっていた。 くねくねと曲がる狭い路地、すすけた家々の壁、ほこりとゴミにまみれた道路、生臭いにおいが漂う市場……まさに、絵に描いたような魅惑的な旧市街であった。 |
| ◆1981年(大晦日)のシラクーザ | ||
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| ▲▲シラクーザ駅に到着した本土からの夜行列車。 ▲オルティージャ島の市場。絵に描いたようなシチリアの漁師といった雰囲気の男性。夫を亡くした女性は、左の人のように、ずっと黒い服装で過ごすのがシチリアの伝統である。 |
▲▲シラクーザ駅近くのフォロ・シラクザーノあたり。バイク改造の(?)三輪車で、おじさんは何を売っていたのか。 ▲オルティージャ島にて。家並みは今でもまったく変わっていないが、ゴミはもうこんなに落ちていない。 |
| シラクーザといえば、かの有名なギリシャ人数学者アルキメデスが住んでいた町である。彼が風呂場で「アルキメデスの原理」を発見して、喜びのあまり「エウレカ(=ユリイカ/わかった)!」と叫びながら、裸で走りまわったと言われる町がここなのだ。 オルティージャ島の中央には、彼にちなんで、アルキメーデ広場(アルキメーデは、アルキメデスのイタリア語読み)がある。 私もアルキメデスにちなんで、この町では、歩き愛でるです。 現在では、シラクーザ中央駅横のバスターミナルを起点とする無料のミニバスが、この広場まで走っている。ちなみに、小さなオルティージャ島であるが、島内には電気で走るミニバスがこまめに巡っている。 |
![]() ▲路地の上には、洗濯物にまじって、きたるべきクリスマスのための飾りつけがすでに設置されていた。 2007.11 |
▼オルティージャ島に来る観光客は増えたが、まだまだ素朴で居心地がいい感じ。
2007.11
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2007年秋、26年ぶりに訪れたオルテージャ島は、ずいぶんこざっぱりとして、ささやかなリゾートという雰囲気を漂わせていた。ほこりっぽくて異臭のした路地も、きれいに清掃されて土産物屋やバール、レストランが軒を連ねている。 アルキメーデ広場の近くには、ブランドものの服がショーウィンドウに飾られていたのがまぶしかった。 貧乏旅行だった1981年には、午前中にやってきて、日が傾く前には次の町に移動してしまっていた。当時は、短い時間にたくさんの町を巡ることが最優先だったのだ。 2007年に訪れたときには、窓から海の見える、こじんまりとしたホテルで3泊もしてしまった。交通機関のストライキがあったことも理由の一つだけど……。 「当時も、この町に泊まってみたら、さぞかしおもしろかっただろうに」 2日続けてウニのスパゲッティを食いながら、私はちょっとセンチメンタルな気持ちになったのであった。 |
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●所在地 シチリア州シラクーザ県(県都) ●公共交通 ・カターニャ中央駅からイタリア鉄道で1時間半。比較的頻繁。トリノ、ミラノ、ローマ、ナポリ方面からの直通列車もある。 ・カターニャから高速バスで約1時間半。頻繁。カターニャ空港経由の便もある。 ●見どころ ・ほどほどのリゾート感覚が楽しめるオルティージャ島ののどかな雰囲気。 ・考古学地区に残されているギリシャ時代の遺跡。 ●老婆心ながら 宿泊するならオルティージャ島がお勧め。レストランでは海産物が豊富。シラクーザ中央駅横のバスターミナルからオルティージャ島の中心(アルキメーデ広場)までは約1.5km。無料のミニバスが走っている。 |
オルティージャ島の東海岸からシチリア本島を望む 2007.11 |
| 2008年7月作成 | |
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