トップページ
イタリア町めぐり

トリオーラの墓地からの眺め 2009年6月 地図


 リグーリア(リグリア)州というと、チンクエテッレやリヴィエラ海岸のように、海辺の町という印象が強いかもしれない。そんな町も悪くはないのだが、海岸から一歩内陸に入ると、また個性的な町が点在しているのだ。

 とくに魅力的なのが、「鷲の巣村」と呼ばれる山岳都市の数々。高い山の頂上や尾根に、ある程度の規模の町がつくられている。
 アプリカーレ、バイアルド、ペリナルドなど、このあたりにはさまざまな町があるが、なかででも、このトリオーラは山岳都市の理想形といってよいほど美しい。また、上の写真からもわかるように、眺めも抜群である。


山岳都市トリオーラ。右奥の山の上に墓地があり、そこから撮ったのがトップの写真。

2009.6

トリオーラの中心部


 ここへは、海辺の町サンレモからバスの便が1日に4往復ある。サンレモといえば、有名な保養地であり、サンレモ音楽祭の開催地でも知られている。そんな賑やかな都会から山道に入ってしばらくすると、両側の車窓には山並みが迫ってくる。リグーリア=海辺の州というイメージをくつがえす光景である。

 バスは、たまに小さな町の中に入っては遠ざかるということを何回か繰り返し、2時間かけて終点のトリオーラに向かう。サンレモでは6月の陽光に包まれていたのに、途中からはすさまじい雷鳴がとどろき、土砂降りの雨が降ってくるという劇的な歓迎ぶりだった。ちなみに、6月といっても日本と違って地中海性気候で梅雨もなくカラッとしているから、ここまでの天気の激変には驚いた。
 もっとも、バスの運転手も乗客も平然としているところを見ると、この地域ではよくあることなのかもしれない。


旧市街で出会った猫

旧市街の狭い路地を歩いていると、こんなネコちゃんに出会った。魔法使いの弟子のような顔をしたネコである。

2009.6


おそらく、町でも一番古い地域にある建物の1階入口。デザインも色もなかなか印象的。

2009.6

不思議な家


「傘も持ってこなかったのに、標高700mの山の村でどうすりゃいいんだ」
 到着の20分くらい前まで、びしょぬれのガラス窓を見ながら呆然としていたが、幸いなことに雨もやがてやんで、ほぼ定刻の16時半にバスは人口400人のトリオーラに到着した。この小さな村で、20時発の最終バスまで過ごすことになる。

 小さな村ではあるけれど、そこそこスケールは大きく、しかも山の上で起伏があるので、狭い道を登ったり降りたりを繰り返して、ざっと1周するだけで小一時間はかかった。
 町の一番古い地区と思える一帯は、この上下の写真にあるように、岩山と住居が一体になっていて、見るからにおどろおどろしい。ただでさえ天気が悪いうえに、切り立った岩山の谷間に家々が並び、そんな隙間にマリア像が安置されていて、やや不気味ではあった
 しかも、小さな博物館では、このあたりにかつて魔女伝説があったということが書かれており、中世には魔女裁判も行われていたようである。どこまで史実なのかはわからないが、釜ゆでや火あぶりの様子が描かれた本が置かれていた。


町はずれのマリア像
▲ごつごつした岩のなかに、マリア像が彫られていた。
2009.6
▼今にも、建物が岩に飲み込まれんとしているように見える。
2009.6
岩の隙間に立てられた家


 そんなことを書くと、本当に恐ろしい村のように思われるかもしれないが、じつは国境を越えてフランス人観光客もそこそこやってくる村で、山の幸が有名らしい。小さな物産店では、蜂蜜だけでも何種類も置かれていて、私はちょっと高価な濃褐色の「高山の蜂蜜」を購入。ラベルには、魔女が得体の知れないものを鍋でぐつぐつ煮ている絵が描かれていた。
 魔女の絵は村のあちこちにも描かれていて、どうやら魔女で村おこしをしているといった様子である。

 比較的新しい家々が並ぶ北側の地区は、空が見えて明るく、家の前に花が飾ってあったりして心が和む。そんな尾根道をたどっているうちに目の前に広がったのが、上から2枚目の写真。そして、私は思った。
「もしや、右上の小山に登れば、村全体が見渡せる?」

 そう思って、最後の力を振り絞って山頂にたどりつくと、なんとそこは墓場ではないか。しかし、そこからはこれまでイタリアで見た絶景のうちのナンバーワンともいえる風景が広がっていたのである。トップとラストの写真がそれだ。
 ところが、まさにその瞬間、遠くから雷鳴が再び響いてきた。あせったが、周囲には隠れるものが何もない。それどころか、近くには大木が何本も立っていて、ここに落ちたら一巻の終わりである。


町の中心部近く。新市街(奥)と旧市街(手前)の境。奥にちらりと見える青いのが、1日に数本の路線バス。

2009.6

トリオーラ中心部・バス停近く


「こんな辺鄙な村で一生を終えるわけにはいかないぞ」という恐怖と、「この素晴らしい景色をじっくり撮影しないでどうする」というスケベ根性との葛藤を抱えつつ、そそくさと撮影をしたのちに、急坂を転げ落ちるように戻ってきた。

 雨も降ってきたし、あとは帰るだけなのだが、まだバスの時刻まで1時間半以上あった。しかたないので、村民400人にしてはおしゃれなバールで軽食とビール。さらには土産物屋で蜂蜜以外に鹿のサラミとイノシシのサラミを購入した。
 そのうちにまた晴れてきたので、もう一度墓場を再訪。さらにじっくりと絶景を味わったのであった。


●所在地
リグーリア州インペリア県
●公共交通での行き方
・サンレモのバスターミナルからRiviera Trasporti社のトリオーラ行きバスで1時間30分。平日4往復、休日3往復。
●見どころ
・典型的な山岳都市で眺めが最高。
・キノコ、蜂蜜、サラミなど、新鮮な山の幸が絶品。

●老婆心ながら
本文にある通り、海岸沿いとは打って変わって、夏は午後になると天候が急変するというので、雨具を持参するといいかも。

トリオーラから見える山岳都市 町の上にある墓地からは、周辺の山岳都市を望むことができる。左手前がコルテ、右奥がモリーニ・ディ・トリオーラ。 2009.6
2014年5月作成

■「よろず話」トップページに戻る | 「イタリア町めぐり」目次に戻る■