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とりあえず写真館


能登半島・輪島の朝 (1974年)

海苔と老婆
 輪島といえば朝市である。せっかく能登半島までやってきたんだから、朝市を見なければということで、まだ高校生だった私と友人たちは、朝市が並ぶ通りまで歩いてやってきた。
 どこかほのぼのとして、のんびりした朝市の風情----だが、そんな私たちの勝手な期待は、すぐに裏切られた。
「にいちゃん、買っていきなよ」と声をかけられるだけならまだしも、店から飛び出して「ほら、とれたてだよ。安くしとくから」と行く手をふさぐ。
 旅ははじまったばかりだし、もとより冷やかすだけのつもりだったのだが、おばさんたちは純情な高校生と見たのか、私たちに容赦なく襲いかかってくるのだ。よくいえば活気があふれているが、悪くいえば喧騒の極致であった。
 想像とのあまりのギャップに頭がくらくらして、私たちは朝市の通りから逃れ、港のほうに歩いていくことにした。通り一本へだてると、そこは静かな港町であった。道端に干してある海苔を目にして、ちょっとほっとしているところに、上品そうで味のあるおばさんが通りかかった。




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