はじめのうちは森の中を走っている感じだが、やがて開けた場所に出る。もう、われわれの目は両側の風景にくぎづけだ。 そして、列車は樺平の18段スイッチバックにさしかかった。ここで一気に高度を200メートルほどかせぐ。 どれほど時間がかかるのかと思っていたが、意外なほどあっさりと越えてしまった。
このスイッチバックを越えると、半径7メートル(!)のカーブが待ち受けている。 それにしても、もし便乗ができなかったら、軌道の上を歩いてくるつもりだったから、やはり若かった。
このような素掘りのトンネルはあちこちにある。ざーざーと水が流れているトンネルもあった。 ところで、当時は軌道上も立入禁止になってはいなかった。登山用の地図にも、軌道が立山温泉に向かう登山道として扱われていたほどだ。 しかし、立山温泉はすでに営業をやめていたらしく、やがて軌道も立入禁止になってしまった。